あの風はきっと君だ。

今の仕事に変わったときの最初の目算では、年に何ヶ月かはきっと仕事がすっかりなさそうな数ヶ月があるだろうということだったのだけど、その希望的観測は見事に裏切られました。ぬおーそのおかげで最近稽古にめっきり行けず、ストレスも体脂肪も順調に蓄積中です。危険! その前に振りが……!!!


今日(と明日)は、そんな忙殺の日々のなか、オフィスを離れて勉強三昧。珍しく生活圏から離れた錦糸町まで出かけてきた。ん、錦糸町? てことは……(亀戸近い?)……てなことを行きの電車で考えていたら、これは自性院に寄らないわけには行かないという気がムクムクと湧いてきて、昼休みに強行軍で隣の駅まで(ううむ我ながらよく行った)。
思えば3月の末も忙しくて、総武線に乗るような気力はまるでなく、5月のイベントも同じような理由でリタイア(あとで写真を見たら、竜ちゃんも来てたんだなーちょっと残念)。でもまあ、7月のワイハ出張の人選からは案の定漏れてしまったので、結局今年もライブには行けるンだぜ! と思っていたから良いといえば良いのだけれど、せっかくね、近くまで来たのだからね。それに、こんな機会でもなければ、やっぱり足もなかなか向かないしね。


ところが、思うように花が買えなかった。いつもなら地元から買って持参するのだけれど、急に思い立ったことだし、駅か道すがらで買えばいい、と思っていたのだけれど、慣れた道を通ってみたら、実は花屋がなかった。仕方がないので、京葉道路を越えたところのモールの中で、鉄砲百合とピンクのスプレー菊を買う。むむ、ガーベラでなくてゴメンですよ宮城くん(レジを終えたところで「お花たくさんあります」の看板を見つけたけれど、気づかなかったよ……)。


湿気をたっぷり含んだ熱っぽい空気を突っ切って角を曲がる。やあ宮城くん、ご無沙汰です。さすがに、3月でもなければ月命日でもないこんな日にはお花もほとんどなかったね。とりいそぎ観音様の周りを水で払って、ピンクの方を生ける。それから墓前に百合を生ける。そうか、だったらもっとたくさん買ってくれば良かったかな。合掌しつつ、くるくるといろんなことを考える。


……何故、今の今になってもこんなことを、と聞かれると、上手い説明はなかなか見つからない。でも、あの場所を大事に思っている人は今でも少なからず居て、そういう中のほんの周縁に私もいる、ということなのだろう。そして、ここまで大事に忘れなかったことは、きっとこの先も覚えているのだろうな、と感じている。ここまで忘れなかったこと。なるほどね。思い返すとたくさんありすぎてちょっと呆然とするけれど、そういうものごとのずっしりとした重みこそが、今では私をこの場所に立たせてくれている……のだよね、宮城くん。


などと独りごちながら、元来た道を再び戻る。あの時、吹き出す汗を瞬間、癒してくれた一陣の風は、宮城くんからの手紙だったのかな、と、詮のない思いつきを反芻しつつ。