(私の)世界の均衡は氣志團で保たれている。

全ては今朝のことだった。冷たくて、熱い朝だった。


私は歩いていた。耳元では團長の声が響いていた。脇目はふらなかった。
背筋は、丸めない。視線は、落とさない。「今日いちにち」という、今週残された最後の敵に挑むため、雑音を心のエンジンコールで遮断して、静かに集中を高めていく。空気は頬を切る鋭さだったけれど、もう気にならなかった。


私を追いこしていく人たち、私が追いこしていく人たち。
人工的に作られたデッキが、その先のビルへと無表情な機械人形を吸い込んでいく。誰もが同じネズミ色に塗りつぶされていく時間。


「押しつぶされちゃいけない」


私は、ポケットの中でボリュームのアクセルをさらに踏み込んで、心臓の回転数を限界まで上げた。そうだ、團長の声をフルスロットルで流し込んでさえいれば、まだ自分を失わなくてもいい−−−その時だった。


私は、人の流れの片隅で、既に朝の仕事に入ったと思しき、若い職人の姿を視界に捉えていた。無機質な野菜たちが、ひたすら前へ前へと流れていく中で、彼はそれに抗うかのように腰を下ろし、ゆっくりと手元の作業を続けている。使い込まれたメット、藤色のニッカ。ひと目で寅壱とわかるそれの、幅はかなり太い。
そうだ、人は皆同じなんかじゃない。私がこれから大きな古時計の歯車のひとつにならざるを得ないにしても、ここでこうしてあなたがタイルをはつったり、養生テープの後始末をしている限り、世界の均衡はきっと保たれる。誰も彼もが悪魔に魂を売る必要なんてない。
突然、勇気の啓示が私を貫いていた。ただ数秒のすれ違い。だけどこの出会いは嘘じゃないよね。だってあなたの背中にも、ちゃんとそう書いてあるよ。


ファンタ 買って 来い


……。


兄さん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(感涙)


……というわけで、今朝出勤していたら、会社の前の工事現場にいたお兄さんがファンタパーカを着てなすった、というお話。ふがー! ムチャクチャびっくりしたよー!!!
最初はメットに貼ってあった「綾波レイ」のステッカーが、だいぶ年期入ってすり切れているのに目を奪われていたのですが、ツツツ…と視線を落とすと、その兄さん、藤色ニッカの上にちょっと上等なパーカを着ている。その他にいた兄さんたちは、いわゆる「ベスト」が多かったから、最初は単に違和感を感じたのだろうけど、なにげに気になって見つめること5秒……ああああんた、それ!!!?!!!?!(笑)


通り過ぎて7秒経っても、立ち戻って「ファンタパーカっすね! オレも欲しいっす!」と声をかけたかったのだが、私は私でそのとき「127」がフルボリュームで佳境に入っていてそれどころじゃなかった、というか、冷静な思考はとてもできなかった。
ふ〜。私のiPod miniちゃんは、背中に「1/6 LONELY NIGHT」の團長を背負った真っ赤なカバーを掛けているのだけど、それを印籠のように見せつけて立ち去るだけでもすれば良かったかなぁー。出来ないと思うけどねー。いや、それにしても何て素敵な日だったんだ。多分、普通に街を歩いていて女の子が「ファンタ」を着ててもこんなに嬉しくはなかったと思う。本当に勇気を貰いました。多分、そろそろ世界は氣志團で出来ているようになってきていると思います。まだかもしれないけど。


それにしても、あの彼はどんな風に氣志團ちゃんが好きなんだろう。意外と、彼女の家から出てくるのに着替えが無くてただ借りただけ、だったりとかね。そんなんでもいいよな〜。もう、そういう想像をするだけで十分楽しめますです。あああああ。ショボーン