「えびふらっと・ぶるぅす」、渋谷駅にて。

昨日は夕方外出してそれきりになってしまった。めったに行かない渋谷。いや、行くんだけど、ただ通りがかるだけの渋谷。今はさほどの思い入れもない渋谷。


走る電車の窓からぼうっと外を見ていたら、パンテオンの跡地は工事で凄いことになっていた。待ち合わせ打ち合わせによく使ったユーハイムはどこか近場に移転したのかしら。そんなことももう全然わからない。昔は毎日この前を歩いて会社に行っていたのに、生活の場所(エリア)が変わるとあっけないものだ。それともうひとつ、何年もまえに何年間も「今日も、まだある」と思っていたビルも、昨日は既に取り壊されて別の何かに生まれ変わってしまっていた。へええ、そうなんだ。


その店は、多分喫茶店かダイナーみたいなものだったんだろうと思う。「思う」というのは、私自身はその店に行ったことがなかったからで、とある年のとある3月に、椿の花がポトリと落ちた、そのうんとあとになってから、「その店」が「みんな」の溜まり場だった、というようなことを聞いたのだった。
友達のお姉ちゃんが、実はその店によく通っていたんだって。そして、「みんな」とよく会ったりしたんだって。仲間内でリリースした2枚のアナログ盤も、お姉ちゃんは持っていたんだよ。直接貰ったというサインも見せてもらったよ。「今はもう別に好きでもないんだけどね」という割に、どちらも最後まで譲ってもらうことはできなかったな……そんなことを、あのビルを見るたび、いつも思い出していたんだった。


ところが、それが「B■(フラット)」だったのか「G■(フラット)」だったのか、今はもう思い出すこともできなくなっていて、時間の長さに改めて驚いている。確かめてみようとひとしきりネットで調べてみたけれど、結局わからなかった。仕方ないか。私が「ある」と思って眺めていたときから、多分ビルの中はもう空っぽか、まったく別の屋号になっていたはずで、それでも昔の名残のロゴが、かろうじて外壁に残されていただけだったのだから。その抜け殻に、私は勝手にいろんな思いを馳せていたのだ。

空気が温んで雨がよく降る季節になると、自然と昔のことをたくさん思い出す。
いやなことも、いいことも。