スワロウテイル・バタフライ。

本当はこのお金は魔法のカードの代償として、あの重い鉄扉の向こうの金庫から羽が生えて飛んでいくはずだったのに、今日の通りがかり、ついお店の人に手渡してしまった。その代わりに私が手に入れたのは、揃いの姿をした蝶々の銀のピアスとペンダント。ううう、一目惚れでした……。


ペンダントはさておき、実はこのピアスは、買ってもすぐには使えないのだった。
というのも、私の耳には2つのピアスホールが開いてはいるのだけれど、それはどちらも箸を持たない方の手に繋がる耳たぶの上であって、鉛筆を握る方の手に繋がる耳たぶには、未だに傷のひとつもついていないのだ。しかし、左右で対を成すデザインのこの蝶々は、多分両の耳に1頭ずつ留まっているほうが似合うのじゃないかな。だから、このピアスはせめてもう1つホールを開けなければ、用をなさないのであった。


何故片耳だけ(ピアスホールを)、といわれても、それは「開けたときにはそれがいいと思ってたんだもの」としか言いようがなくて、21になった冬のある日以来、そのままバランスを取るのを忘れてここまできてしまったのだ。途中には、コンサバな男の子から「片方にしか(ピアスを)していないなんて」などと眉をひそめられたりもしたけれど、今よりずっと難しいことばかり考えていた当時は、ありきたりにするのはイヤだったんだな、どういうわけか。そしていつのまにか開いている片方だけすらも飾るのをやめてしまった。でも、傷は埋まることなく、今でもちゃんと機能している。


ピアスを開けたのは、その時何か強い思い入れがあったから、のような気もするのだけれど、もう忘れてしまった。そして今猛烈に「もう片耳」にもピアッサーを通したいと思っているのも、こじつけの理由があるようでいて、何年か後には風に吹かれて飛んでいってしまううに違いない。今とても考えているこじつけの理由と、今までかたくなに守ってしまったもの、どちらが重くなるのかわからないけど、ただ言えるのは、この蝶々とは仲良くしたいということ。とても夏向きの3頭だけれども、一番映えるように身につけたいと思っている。うーん、どうしようかな。いつ行こうかなぁ。ていうか、今もみんな病院で開けたりするのかな? そんなことからもうわからないのだった。要調査。