Junior Kickstart

自分が16歳のときどんな夢を見ていたか、今なら思い出すことができる。少し得意げで、それでいて強くは言えなくて、けれども世界中のどんな野望より実現の可能性がある、そんな夢だった。なぜ実現しなかったのか? それは、16歳なりの少しのプライドや大いなる照れを捨てることができなかったのと、思い描いた筋書きが、私以外の世界中の誰もが気づいているくらい、小さな井戸の中での出来事だったから。


……自分がいい大人になって、相変わらずこんな(どんなってまあこんな)感傷に浸っているなんて、自分自身ではちっとも違和感なかったりするのだけれど、あれから時間がたって何かひとつ「変わった」と思うことがあるとしたら、その「夢」を人に託すようになった、ことだろうか。


ここ何年か、踊りを趣味として大事に楽しく続けているのだけれど、そこでのクラスメイトが今、本当に伸びようとしている。もちろんね、この国の踊りの人口を考えたら、「伸びる」といったって大変なことなのだけど、例えば私が16の時には、照れて口にさえ出せなかった海外への扉だって彼女はもう開いてしまったし、ひとつまたひとつ、着実に階段を踏みしめて、それは決して常套の道筋ではないのだけれど、もしかしたら、ひょっとしたら、という期待を次々もたらしてくれる。


他の大概のことなら、まだまだ自分が実現しようと思うものだけれども、踊りばかりはそうも行かない。身体だけは年齢とともに不可逆性の進化を遂げているわけだから、今から私がプリマになることは、当たり前だがもうない。けれど、もしも彼女がこんなふうにずっと舞台で踊ってくれるなら、それはもう自分が踊ることのように嬉しいだろうな、と今は心から思うのだ。我ながら(こそ、かも)、これは凄い感覚の変化。自分以外の誰かのことを、こんな風に思うようになるとはなぁー。


とはいえ、自分の精進を忘れたつもりはないので、明日からはまたちゃんと稽古に復帰します。そして、明日稽古場で会ったならば、今日の彼女からのビッグニュースについて、もう少し詳しく聞かなければ。というかね、そのあなたのおかげで、私は別の新しい夢(野望?)を見つけたのだよ。それを近々相談させてちょうだいね。まずは、その翼が折れることなく羽ばたけるよう、強く強く祈ります。今年のシーズンはいろんな意味で楽しみだ……!