まほうつかいのせんせい。

三寒四温の季節はとうに過ぎたのに、暖かさと冷たさの空気が交互に入れ替わる今日この頃。その「冷たさ」のほうのとある午後、わたしたちは真子せんせいを思いに行った。
おしゃべりをしながら待っていても、今にもロビーへ現れ、「ようこそ」なんてとびきりの笑顔で迎えてくださるのではないかと思えてならなかった。せんせいもう本番ですよ、と声をかけると、ニコニコとした佇まいのままふっと消えて、気づけば舞台の上で客席に魔法をかけて、また何事もなかったようにロビーへ戻ってくる。何度も驚かされたのだ、今日だってきっといつもと同じ……そんな思いを、いもうとはせんせいの「気配」で感じていたらしい。そうか、いもうとはきっと、真子せんせいに守られてあの舞台をつとめ仰せたのだな。いつもに増してさらにキラキラとした粉を降らせる彼女を見て、鼻の奥がツンとするのを止めることができなかった。


思い出の物語では、自分たちを振り返るにつけ何もかもが誇らしく、この芸術をこんなに楽しいものだと教えてくれたせんせいにまた感謝。
こんどは、みんなでご挨拶にいきましょう。その日は、暖かいといいな。桜散る散るだった、あの日のように。