先陣切る、エンジンコール!


「ちょっとさ、電話かけてみ?」


とある昼下がりのコーヒータイム。
隣に居るのに何を言う、と思ったけれど「あいよー」と返事をして促されるままにワンタッチで架電。

すると横から



ブーンブブブン ブーンブブブン ブーンブーン ブーンブブブン・・・


・・・?


「な? これ、いいっしょ??(満面の笑み)」


「着信音変えたの。
 俺ねー、やっぱコレ聞くとアガるわ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・???


「知ってる? エンジンコールにも時代があってさ、
 今のこれは割と最近なんだよ。
 俺らの頃はもっとこうリズムが違ってさ、◎×※▲◇・・・・」


あ、いや、その、だから、これがその、いわゆる「族」の人たちが鉄馬を発進させる際にアクセルをふかして鳴らす威勢のいい音=エンジンコールということは十二分にわかるのだけど、そしてきみが以前にバイクに乗っていたことも知っているのだけれど、たしかきみの走行場所はむしろ「つくば」とか「もてぎ」といったサーキットの中で、国道とかそういうところではなかったはず。


「知ってる? CBXとかさー。
 あと◎×※▲◇・・・・(マシンの名前は既に解析不能)」


つつつまりこれは、このやりとりは、わたしが先月嬉々として「きしだん」というチームのコンサートに、しかも連荘で出かけたことへの明るい恫喝なのか?
行き先を最後まで告げないことへの後ろめたさに耐えかねてやっと意を決して告白したというのに、これは「当てつけ」というやつなのか? あああん?


えーーーと、、、じゃあ、こ、これ聴いてみようか・・・と、心臓に軽い痛みを感じながらプレイリストから選んでみたのは、アルバム『愛羅武勇』から「俺達には土曜日しかない」。


「・・・・(無言)」


えーと、バイクの名前とかいっぱい言ってるでしょ


「・・・・言ってない。『ゆうき!』とか言ってる」


あわわわわわそれじゃない! こっちこっち! たぶん、バイクの音から始まってると思うんですけど・・・


「・・・・・!(ピコーン!)」
 そうそうそう! このコールはそうだわー」


その後、エンジンコールの時代的変遷についてのレクチャーほか、口ずさむ場合のコールの練習パターン(難易度によって段階が分かれているらしい。実機ではとにかく腱鞘炎になるまで握るとな)、「族」というものは中学1年から3年までに走り倒して卒業するのがホンモノである、とか、友達のショウやん(仮名)がタンデムのままウィリーしたら後ろに乗ってたヒカル(仮名)が「だっこちゃん」のポーズのまま2秒くらい宙に浮いてた(のち落下)話とか、かつて不揃いのポテトたちが繰り広げたような武勇伝をたくさんおせーてもらうのであった。


・・・・何者・・・・?